ノルマンディーから上陸作戦(前編)
7月21日
無事ノルマンディー地方にあるモン・サン・ミッシェルまで自転車でフランスの縦断に成功した俺は、次の目的地を決める上で発生した大きな問題に頭を抱えていた。
どう足掻いても、進路上にパリがある(泣)
芸術の都 花の都 ベルバラの舞台 フランスの首都 パリ
こう書くと素敵な街に思えるかも知れないが、俺はとっくにその正体を見抜いていた。
即ち、魔都。 悪夢の都である
もとより貧乏チャチダーにとって、大都市というのは全力で回避すべき災害であるというのが個人的な意見だ。
まるで迷路のように旅人を絡めとる複雑な道路網
有り金を搾り取るかのように跳ね上がる観光地価格
立っているだけで体力と精神を削りとられる人と車の渦
特に興味のない有名観光地の数々
どう考えても疲れるだけなのが目に見えている
もし想像しづらいのならば、「土地勘も地図も無しに群馬方面から東京都にチャリで侵入して、永田町に立ち寄って山梨方面に抜けるようなもの」と考えていただきたい。
実際難易度はどっこいどっこいだと思う。
しかし心の底から行きたくないと願っても、東京都がそうであるように主要な道は全て首都であるパリに立ち寄っている。
また一応形式上巡礼の途中である身としては、巡礼地(ノートルダム大聖堂)を避けて通るのは心苦しい。
あとルーブル美術館だけは観たい。
・・・行くか。
腹を括った俺は、「ヒット アンド ウェイ(スタンプもらって即座に離脱)」を合言葉に、パリ上陸作戦を実行するのだった。
作戦初日
12:00
パリ近郊までの接近に成功。これから中心部への侵入を試みる。
でも、ここパリのどこ???
フランス全国地図
パリに近付くと自動車道専用道以外の表示が無くなる。
凄い話だが、地図はフランス全国地図これ1枚しか持ってなかったりする。
都市部内は完全に徒手空拳だ。
因みに作戦の概要を説明しておくと、本日の目標は市街地潜入と安宿のベッドの制圧。
明日は朝イチでルーブル美術館を鑑賞し、ノートルダムでスタンプをもらって即座にパリを離脱できればミッションコンプリートである。
安宿の情報は持っていないが、夕方6時の閉店までにツーリストオフィスを見つければその場で紹介してもらえる筈なのでなんとかなるだろう。
時間に余裕があるので、迷子を楽しみながらのんびりと進む事にする。
13:00
巡礼者のおばちゃんと遭遇。
ホタテ貝の貝殻を見せ合うだけで旧知の中になれるのだから、巡礼者の繋がりは凄い。
彼女はスペインのサンティアゴから、歩いて実家があるオランダのアムステルダムまで帰る途中らしい。
さらっと言っていたが、道程は往復で4000㎞以上ある。
勝つ必要はないが、器の大きさで一生勝てない気がした。
暫し情報交換。
彼女曰く、「パリにて大きなお祭りがあるから、明日はルーブル美術館をはじめとする施設はあらかた閉まるので気を付けてね♪」とのこと。
祭り = ホテルは観光客で即座に埋まる かつ 道がメチャクチャ混む
明日は施設が閉まる = 今日しか観光のチャンスがない
・・・
一刻の猶予もないじゃん!?
予定変更。今日中にルーブルを観光する事に。
急ぎパリへとかっ飛ばす事にした。
なんとなく中央っぽい方角を目指して。
パリ周辺は意外と森に囲まれている
14:00
外郭侵入。予想通り環状線に道を阻まれる。
大都市における環状線は、チャリダーにとって城で言うところの城壁であり堀である。
中心街を囲うようにぐるりと巡らされた自動車道は、まるで外敵を阻むかのように中央へ繋がる道を遮断していた。
こういった事態に陥った時、使える手段は2つ。
迂回するか、力業で突破するかである。
時間がないので今回は後者をチョイス。
見るからに自動車道専用道だが、自転車進入禁止の看板が出てないのを良いことに潜入を試みた。
高速で走り抜ける自動車の脇を鈍足で滑走。すれすれで走り抜ける自動車の風圧が半端ない。
流石に命の危険を感じて早々に退避を決意。
元々中央にさえ向かえれば良かったので、最初に目についた曲がり角を曲がってみた。
そしたら土坪った。
曲がり角が合流したのは、まさかの本物の高速道路。
弾丸のような速度で鉄の塊が、命すれすれを駆け抜けていく。
死ぬ! ΣΣΣΣΣΣ
殺される!!ΣΣΣΣΣΣΣΣ
逃げようにも高いフェンスに囲まれ次のインターまで逃げ場なし。
無論来た道を戻るなんてできるはずもない。
結局クラクションに脅されながら、その後道路警察に保護されるまで端っこをビクビク走り続けるのだった。
死ぬかと思った・・・
15:00
警察の方に散々お礼を述べて、無事2の丸潜入成功。
因みに警察の方曰く方角は合ってたらしく、本丸のある中心街まであと道なり10㎞らしい。
当初鉄筋むき出しの廃墟の様だった街並みも、中心街に近づくにつれてトラムが走り、石畳が増え、マンション等の些細な建物にさえ彫刻が掘られるようになった。
ビフォー(街外れ)
アフター(中心地)
道端にだって芸術が溢れている
16:30
やっと中心街に到着。なんとかルーブル美術館の入り口へたどり着く。
が、17時には閉まるとのこと。それでは観たいものの半分も見れない。
そのために入場料を払うのも勿体なく、残念ながらルーブルは諦める事にする。
恨みがましくスタッフに、因みに明日は休館なんですよねえ?なんて言ってみたら、
いや、開いてるよ? とのこと。
そうかやっぱり開いてるのか・・・
ちょっと待って? 開いてんの??Σ
新事実発覚。明日は確かにお祭りがあるが、ルーブル美術館は普通に開いているらしい。
つまり高速にダイブしてまで急ぐ必要は無かったってことね。
うん、やりきれない・・・(泣)
ルーブルは一応目処がたったので、次は入場料のかからないお決まりの観光地を巡りつつツーリストオフィスを探すことにした。
コンコルド広場
今はただ塔が立っているだけだが、18世紀にはギロチンが設置されてマリー・アントワネットやルイ16世を始めとする約1300人がここで処刑された。
なにかと責任を押し付けられるマリーさんだが、彼女の責任に関係なくフランスの財政は修復不能なまでに傾いていたので、彼女のせいと言うか盛大なロシアンルーレットを引き当てただけな気がしないでもない。
凱旋門
製作を指示した人が死体となって凱旋したことで有名。
「行ったことあるよ」と自慢できるが、「じゃあどうだった?」と聞かれると返答に困る観光地その1。
お洒落で有名なシャンゼリア通りは、明日のフェスティバルのため観客席を架設中。
話によると自転車のイベントらしいが、次の日は大雨。開催できたのだろうか?
言わずと知れたエッフェル塔
でもなんと言うか・・・うん。行ったら分かる観光地その2
さてとうに6時を過ぎたのだが、未だにツーリストオフィスが見つからない。
この時間から情報無しで手頃な値段のホテルを探すことは難しいが、かといって首都のど真ん中で野宿するわけにも・・・
いや、ありか?
思い立ったらすぐ行動。
中心部から外れていて、観光客や人通りやが少なくて、適度に治安が良さそうで、人目につきづらく苦情の出なさそうな所を探す。
結果エッフェル塔からセーヌ川を南に下った住宅街に、テントが張れそうな僅かな公園を発見。
日がくれたのを見計らって今夜はここに住み着く事にした。
パリのわが家
無数の車と人込み
縦横無尽に駆け巡る道
たちの悪い詐欺師
予想以上にパリには体力を消耗させられた。
明日はとっととこの街からとんずらを図りたいと思う。
〈後半へ続く〉
博物館の世界のTatooコーナーに飾ってあった、パリで見た中で一番凄い写真作品
なにが凄いって、これを撮影に行った人の度胸が凄ぇ
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