グランドキャニオンの紅い天使
ヨセミテ国立公園からラスベガスに移動して2日目。
毎晩カジノに出掛けて夢を追い続けた結果、俺はお財布の劇的なダイエットに成功していた。
これだけ勢いよく痩せればそのうちリバウンドするだろうと頑張り続けてもさらに痩せ続けて行くのだから、これは新手のダイエット方法として流行らせられるかもしれない。
まあ、お財布限定だが。
どつぼに嵌まらないうちに次の目的地、グランドキャニオン国立公園へ向かうことにする…。
ラスベガスは街中がカジノで遊園地!
ラスベガスからグランドキャニオンまでは近場といえ450㎞ほど離れており、そのため旅人はツアーに参加して向かうのが一般的である。
しかしせっかく行くならフリーで楽しみたいと思い、今回はバスを乗り継いで自力で行くことにした。
計画としては、10日の夜に夜行バスでグランドキャニオン近隣の街、フラッグスタッフへ。
そこのバスの待合室で一晩越して朝イチのシャトルバスでグランドキャニオンへ。
丸一日楽しんだら夕方のシャトルでフラッグスタッフに戻り、夜行バスで12日の朝にラスベガスに戻ってくるという流れである。
国立公園付近は宿代が高いと聞いたので、強行軍となるが無理やり日帰りにする。
長距離トレッキングをするつもりなので万全の体調で挑みたい所だが、まあバスかフラッグスタッフの待ち合い室内で仮眠が取れれば若いしなんとかなるだろう。
因みにここのところラスベガスは日本の夏並みの猛暑。
夜になってもそれほど急激に冷えこまないので、近場のフラッグスタッフもたぶん似た気温だろうし、バスの待合室でも充分仮眠はとれるんじゃないだろうか。
そんな感じで計画を立てて夜。
これから4時間のバス旅、もとい睡眠タイムである。
列に並んで夜行バスに乗り込むが、出遅れたため窓際の席は殆ど埋まっているようす。
窓際の席じゃないと熟睡しづらいのだが、仕方がないので通路沿いの空席を探す。
あ、あのお爺ちゃんの横空いてる。 すいません、隣座ってもいいですか~?
「ああいいよ。座りなさい。」
ありがとうございま「だって、神は貴方のために席を作ってくださったのだから‼」
………え?
「神は貴方のために席を作ってくださったのだから! ところで君は神を信じるかい?君のような歳ではまだ信じられないかも知れない!だがいつか君も信じられる日が来るだろう!例えばこんな話がある……」
………寝かせてくれない(泣)
話が途切れないのでバスの電気が消えたタイミングで狸寝入りで無理やり打ち切るも、このお爺ちゃん、突如窓に向かって手持ちの教典の朗読を始めた。
バスがフラッグスタッフに着くまで4時間フルで。
真っ暗闇なバスの中、真横から永遠と流れ続ける吐息と囁きBGM
・・・寝れんわっ!!Σ
何教かは知らないが、最低限のマナーは守って欲しい。
深夜1時、フラッグスタッフ着。 結局一睡もできんかった…
仕方がないのでバスの待合室で睡眠をとることにしよう。
椅子は固いがまあ寝れんことはないだろうと考えながら、バスの外へ一歩踏み出し・・・
寒っ!!!!Σ
ものすごく寒い‼Σ
後から分かった事だがフラッグスタッフの街は標高2000mで、ラスベガスより1400mも高地にあったらしい。
そうとは知らず半袖に薄手1枚という夏ルックでやって来たため、結局朝までガタガタ震えながら過ごすことになる。
睡眠したら永眠しそう…
朝焼けのフラッグスタッフ
朝7時、日のでと共にシャトルバス乗り場へ。
計画ではこの時点で適度な睡眠を取っており万全な体調でグランドキャニオンへ向かう予定だったが、現実は睡眠不足と急激な環境の変化で頭痛と吐き気を催しており、さらに持病の喘息も発病するというこの旅最悪のコンディションであった。
・・・まともに観光できんのかなぁ・・・
朝9時、グランドキャニオン着。
早速ロッジで情報収集することに。
へい! おっちゃん、5、6時間で楽しめる楽なトレッキングコースない?!
「へいボーイ!それならこのブライトエンジェルコースはどうだい? 名前の通り可愛らしい道なりで、最高に綺麗な景色が楽しめるぞ!!」
キャー、素敵!よし、おちゃんそれにするね!
「グッドラック!」
・・・
ブライトエンジェルトレッキング スタート地点
遠くに見える道の果てがゴール地点
・・・よし。行くか
帰り道にこの標高1000mの崖を登らなくてはならない時点でエンジェルのように可愛らしいし道なり等ではない事は確定しているが、ここまで来た以上行くしかないのだろう。
谷間を縫うように崖下へ向かう
しばらく行くと視界が開け、全体が見渡せるようになり、最後はサボテンの生える荒野をひたすら進む
出発から2時間半、ついにゴール地点のプラトーポイントに到着!!
やったー! 俺はやり遂げたんだ!!
コロラド川を眼下に眺めながらこの雄大な大自然を感じていると、ここに至るまでの苦労も吹き飛んでいく気がした。
リュックの底でくしゃくしゃになったパンで昼食。
30分ほど風景を満喫したあと、バスの時間も近づいているしそろそろ引き返す事にする。
よし、帰るかと振り向いて・・・
ゴールは崖の上
帰りたくねえ~・・・・
さっき吹き飛んだはずのここに至るまでの苦労が、一瞬で帰ってきた。
…オカエリ。
足はガクガク砂まみれ。荒野に日陰になりそうなものなどなく、直射日光が容赦なく降り注ぐ。
そして何よりきついのが、帰り道はモチベーションの上がる要素が一切ないということ。
例えばこれが登山なら、帰り道は下り坂。
眼下に広がる景色を楽しみながら、足取り軽く帰ってこれることだろう。
しかしグランドキャニオンの場合、それらは行きのイベントなのだ。
しかも坂を登りきった先に待っているのは頂上からの景色でなく、ただのスタート地点である。
・・・・・なにが天使のように優しいコースじゃあ!!!!
こんなもん完全にダークエンジェルじゃねーか!!Σ
結局帰りは4時間かけて帰還。
時間に余裕はあったが観光などは一切せず、バスが来るまでバス停で爆睡するのであった。
ブライトエンジェル入り口。コースを歩くと身体中が紅く染まる(砂で)
ラスベガスを徘徊する天使
プロジェクト初の参加者、サリーナちゃん。現在高校の卒業旅行でアメリカを放浪中。
夢はまだ決まってないけど、世界の人の役に立つことがしたいとのこと。
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